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困りごと知恵袋

家に居場所がありません。これ以上、家にいるのは辛すぎます。家を出たいのですが、無理ですよね。

何歳であっても、居場所のない(権利侵害のある)家から出る権利はあります。
18歳未満と18歳以上では、使える制度が異なりますが、どこで誰と暮らすのか、本人の意思は尊重されるべきものです。

まずは、家から出たいという気持ちを全面的に受け止めます。自分の気持ちに正直に耳を傾け、実行に移そうとすることを支持したいと思います。その上で、できるだけ安全に家出をすることを一緒に考えましょう。

あなたが18歳未満であれば、児童相談所にまずは相談することをお勧めします。暴力、暴言、育児放棄、性被害などがあるのなら、虐待にあたりますので、そのことを伝えて、絶対に家には帰りなくないことを主張してください。18歳未満が誰にも相談せずに家出して、保護者が捜索願を出してしまうと、保護者の意思が優先され、強制的に連れ戻されてしまう可能性が高くなります。まずは、家には帰りたくないことを児童相談所によく相談してください。もしも、児童相談所は過去に相談してうまくいかなかった、うまく説明する自信がないなど不安がある場合には、児童相談所に一緒に相談してくれる人を探します。学校の先生、子どもの権利を専門としている弁護士さんや子どもシェルター、子ども人権110番など、相談してみて自分の気持ちを一番よくわかってくれそうな人に手伝ってもらいましょう。
そして、家から出て暮らすところとして、中学卒業後から20歳未満であれば、「自立援助ホーム」が利用できます。もし親が反対したとしても、自分の意思で利用することが可能です。児童相談所が手続きの窓口です。近くに空いているホームがない、そもそも近くにないということもあるかもしれませんが、遠くに行っても構わないということであれば、遠くの地域でもいいと児童相談所に相談してみてください。また、自立援助ホームは若者たちのつらい現状について理解のあるところも多いので、直接、どこかの援助ホームに相談の電話をしてみるのもよいでしょう。自立援助ホームは月3万円の利用料で家賃、水道光熱費、食費がつきますので、少しアルバイトができれば、利用可能です。

あなたが18歳以上で、明らかな暴力を受けている場合は、警察に相談しましょう。家族が追いかけてくるのではないか心配だとか、家族に探されたくない場合には警察で事情を説明し、20歳以上であれば捜索願の不受理届を出すことができます。家族からの捜索願があった場合に探されず、家族に対して、居場所を伝えたくないことや探さないでもらいたい意思を伝言してくれます。また、引っ越した後に住所を知られたくないなど、つながりを切りたい場合には住民票の閲覧制限もあります。
警察には抵抗感がある、暴力を受けているわけではないなど、警察へのハードルが高いと思ったら、生活の相談を受けてくれるところを探しましょう。女性なら女性センターや女性シェルターがあります。家を出る上で、経済面が心配なら、生活困窮者自立支援窓口は総合的に相談を受けてくるので、相談してみましょう。必要に応じて、専門相談につなぐこともできます。また、一時生活支援、住居確保給付金など、住まいを確保するための支援もあります。生活困窮者自立相談支援は、市町村で必ず設置することになっています。自治体のホームページから調べることができます。
あなたが何らかの障がいを持っているのであれば、家族からの暴力は障害者虐待として、市町村に必ず設置されている障害者虐待防止センターに相談することができます。すぐに話を聞いてくれて、必要に応じて一時保護などすぐに家から出る手助けもしてくれます。虐待まではいかない場合は、障害福祉の相談機関を使えます。市町村のホームページで紹介されていることが多いです。障害福祉サービスの利用ができるのなら、グループホームの利用も選択肢になります。一人暮らしタイプのところも増えていますので、相談してみてください。

そして、いずれの場合もお金の心配があれば、生活保護の活用を検討できます。家族から暴力を受けているなど、危険がある場合には家族への扶養照会の際に配慮してもらえることもあります。生活保護は、未成年でも単身で受けることができます。自立援助ホームやグループホームで暮らしながら、生活保護を受けることも可能です。

日本社会において経済的な安定がないまま、家から出て暮らすことは様々なハードルがありますが、制度的には可能なのです。無理なことはありません。
ハードルの中でもっとも高いのは「家族なのだから助けあうべき」「子どもは親の言うことをきくもの」などといった価値観かもしれません。残念なことに、相談や支援の場にも、そういった考え方をもっている人はいます。また、日本の福祉や支援は対象別に設置されていて、「うちの担当ではない」とたらい回しにされることもあり、相談すればするほど心が削られてしまうこともあります。

でもあなたには、居場所のない家から出る権利があるのです。本来守られるべき権利が、いろいろなハードルを越えなければ使えないのは悲しい現実ですが、だからこそ、「家を出たい」気持ちを発信することがとても大切です。家を出たい人がいる現実を社会に広く知らせることができれば、制度などをつくる動きも生まれていきます。あなたの気持ちを聞かせてもらうことも含め、生きづLABOではさまざまな取り組みをして、誰もが権利を守られる社会をつくっていきたいと思っています。